1945(昭和20年)/11/29公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
野村浩将演出作品。
細川太市は十五年前に愛妻を失ってから男手一つで、現在近くの町に勤めている欣一と主婦代わりの娘由紀を立派に育て上げた老歯科医である。隣家の山崎夫妻は前々から太市に再婚を勧めていい候補者を探しているが、由紀は大反対なのである。由紀は今更お父さんに新しいお嫁を持たせるのは可哀想だし、自分だけのお父さんとして綺麗にして置きたかったのである。その頃欣一に九州支店転任の命令が来た。それは由紀を面喰らわせた。なぜなら由紀は兄の親友三村と婚約が成立していて兄に嫁を貰ったら自分は三村のいる北海道に嫁いで行きたいと考えていたからである。欣一はハナ婆さんの勧めている再婚説を主張して父にも話をするが、父は断固として受けなかった。由紀はこの悩みを友達の光子に訴えに行った帰り鼻緒を切って困っている時、親切にしてくれた婦人が、ハナ婆さんの推薦する候補者であるのを知って、この人ならと気が折れた。兄の欣一と計ってその婦人を父に逢わせることにした。物静かなかつみを見た太市は、それが再婚の相手とは知らず、貴女のような立派な方が独りでいられるはずがないと褒め出すので、中に入った欣一とハナ婆さんはすっかりまごついてしまった。由紀はその真相を父に打ち明けた…。