1946(昭和21年)/12/24公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
満州から引き揚げて来た木暮実千代復帰第一回出演。演出は佐々木啓祐。
芙美は瀬川の独り息子と出征直前叔父喜一に無理に結婚をさせられた。夫は子供が出来た事も知らずに出征し戦死をした。瀬川夫妻は芙美の貧しい事を理由に、子供だけを引き取り、芙美を強制的に別居させてしまった。芙美は借間で仕立物をしながら生活をした。にわか雨のある日、戸田恭助に傘を借り、翌日戸田の家に傘を返しに行って母子二人暮らしであることを知る。その日家に帰ると叔父喜一が彼女を待っていて瀬川家で子供が病気だから直ぐ来るようにとの話で瀬川家に同道するが、そこで喜一が常に瀬川家に闇物資を入れて金をもらっている事を知る。庄平夫妻は彼女に冷ややかな態度であったが、義妹の京子は何かと彼女をいたわった。その日も彼女は逃げるように下宿に帰った。恭助の母は一目で芙美が気に入り、恭助の嫁にと心秘かに期待していた。恭助も彼女を愛していた。その後また叔父が訪れ某カフェーより芙美を店で働かせることを条件に五千円前借りした為に是非出てくれと頼む。唯一人の身内と思えば仕方なく店に出るようになったが、恭助より一日誘われて朋輩の邦子と三人で山に行き、キャンプの夜恭助より求婚される。彼女は愛するが故に過去を打ち明けかね、自分は真面目な女じゃないと笑うが真剣な恭助に心を偽る事が出来なかった。数日後京子の急報で子供の危篤を知り駆けつけるのが遅く、子供は亡くなった。庄平は芙美を瀬川家から籍を抜いた。その庄平の家に警察の手が入った。芙美は今や一切を恭助に打ち開けた。恭助は母に彼女の告白を話した。母はこの時はじめて彼等母子の過去を話して聴かせるのだった・・・。