1948(昭和23年)/2/7公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
企画は中野泰介。脚本は斎藤良輔、柳川真一、長瀬喜伴で、井上金太郎の終戦後第一回監督作品。撮影は滝花吟一が担当。主演は月丘夢路、それに高田浩吉、笠智衆で、河村黎吉、藤井貢、楠薫らが助演。
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時の政府の高官鯉沼孝之はかつて政敵として争い敗北させた田部の娘和江が、故郷の温泉街で酌婦に身を落としていることを知り何とかして救いたいと思っていたが、その申し出を和江は憤りをもって拒絶した。鯉沼は秘書の森村に彼の意を含めた。森村は一策をろうし、自分は実は鯉沼の政敵で彼を倒したいと思っている。それには和江の協力を得たい--といって和江の賛同を得て東京へ連れて来た。東京では森村は和江を邸に住まわせ、彼女は令嬢として磨かれた。ある日ダンスでふと学生と知りあい、和江はそれが鯉沼の息子清だと知り、偽りの恋で誘惑しようとした。清は何も知らず熱愛した。そうしたある日展覧会場で二人は父鯉沼に会った。清はその日父に和江への愛情を打ち明けた。鯉沼は何とかして二人を結ばせたいと思ったが、それは和江の本心でないことを清に諭した。清は驚き、呆然と家を出た。森村は狼狽し、和江に自分の一策を打ちあけ、和江の本当の保護者は鯉沼であることを告げた。興奮した和江は鯉沼の邸に行き、彼を面罵して身につけた宝石を投げつけて飛び出した。だが彼女は次第に冷静をとりもどし、心の狭溢な自分を考え、鯉沼の温情が思い出されてきた。歩き疲れ行きついた先はかつて清と来た思い出のホテルであった。