1948(昭和23年)/3/23公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
小川記正第一回プロデュース作品。原作は加藤武雄門下の正治清英が婦人倶楽部に書いた短篇小説『灯ともし頃』で、新藤兼人のシナリオ。演出は佐々木康、撮影は斎藤毅の担当。佐野周二主演の炭坑もので、小宮令子、山口勇、逢初夢子、笠智衆らが出演。
北国の山深い炭鉱の町。この山にブラリとやって来た松崎英二はらい落の性格とたくましい体の持ち主である。誰もその前身は知らないが、坑内夫となった彼はメキメキ採炭成績を上げ、山の所長藤森甚三からも信認を得た。所長藤森は一坑員から身を立てた努力精励の人で、眞砂子という一人娘がいた。東京の医専を卒業して新しく炭坑の病院に働くようになった彼女は、偶然同じ汽車でやまに来た英二と相識って次第に親しくなって行く。最近山の配給物資が横流れしているという噂が高まり所長を心痛させるが、これは悪徳漢総務部長の安田が、不良坑員まだらの権たちと結託してやっている悪事なのである。彼等が常にヤミ取引の相談所としているのは町のカフェー鈴蘭亭であった。ここの女給春枝は権の妹であり、無頼の兄のために安田のめかけにされようと日夜苦しんでいる。そしてこの春枝こそは英二のなき戦友の妻で、彼がこの町に来た目的の女性なのであった。英二は春枝を健康な世界へ救い出したいため、しばしば鈴蘭亭へ通い、春枝は英二にいつしか好意以上の気持ちを抱くようになる。そしてそれは安田を嫉妬させ、英二への感情を悪化させ、眞砂子も英二を誤解するようになった。一方安田たちは祭りの夜のドサクサに山すその空倉庫から物資を持ち出すことを計って、その夜が来る。英二は春枝を恩人の妻としての関係において、幸福にするためにこの山から連れ去る決心をして、老坑員吾作の家を訪れる。この事は吾作の娘ふみによって眞砂子に告げられ、眞砂子は英二に対する誤解を氷解し、急いで英二のもとに行くが…。