1948(昭和23年)/5/26公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
久板栄二郎の『女性祭』(日本小説所載)を依田義賢が脚色し、溝口健二が監督、撮影は杉山公平。主演は田中絹代、銀幕を引退していた高杉早苗が数年振りで特別出演する他、角田富江の映画初出演、そして宮本民平、槙芙佐子らが助演。
敗戦後の大阪の街は、未帰還の夫を待つ大和田和子に冷たかった。今日も、幼児結核のわが子浩に牛乳を飲ませるため着物を売りに行くと、店のおかみは「金が欲しいおまんのやったら」とめかけをすすめるのだ。看護のかいもなく浩は死んだ。折も折、夫の戦死が戦友平田によって伝えられた。和子は平田の社長栗山の秘書となり、大和田家を出てアパートに住んだ。和子の実妹君島夏子は北鮮から引揚げてダンサーをしながら姉を探していたが、偶然心斎橋で出会い姉妹は手を取り合って喜んだ。夏子は姉のアパートに身を寄せた。ところが栗山という男は阿片の密輸入業者で、色魔だった。身をまかせてた女は弱い。和子は栗山のいいなりになっていたが、ある日夏子と栗山のみだらな姿を見て憤怒の末はヤミの女になって男に復讐することを決心し、今では姉御にまでなっていた。夏子は出奔した姉を探しに夜の心斎橋筋をさまよい歩いている内、ヤミの女の検索に引っ掛かり病院に送られた。「私はそんな女ではない」と叫ぶ彼女に「うるさいね」と怒鳴った女がある。それは和子だった。診断の結果夏子は栗山から性病を移されお腹には彼の子を宿していることが判った。和子は妹を労わり、栗山には見向きもせず婦人ホームに連れて行き安息の日を与えた。人生の苦悩を考えながら和子は夜の街に帰って来た。
毎日映画コンクール女優演技賞(田中絹代)