1948(昭和23年)/7/8公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
細谷辰雄の製作、菊田一夫の原作を長瀬喜伴が脚色した。監督は野村浩将、撮影は西川亨、音楽は万城目正、出演者は佐分利信、水戸光子、宇佐美淳など。
画家後宮信太郎と雑誌記者藤本春樹は二人とも及川美也子を愛していた。そして信太郎の妹の槙子は藤本に思いを寄せている。信太郎は美也子をモデルにして絵を描き出したが、ある日遂に胸の内を打ち明けた。美也子も信太郎が好きであった。激情にかられた信太郎の強い言葉に美也子はわずかにうなずいた。ちょうどその場に居合わせた藤本は失望して帰る。二人の幸福をかき乱したくないなら、そして槙子を不幸に陥れまいとすれば、藤本としてはやはり槙子のひかえ目な愛を受け入れるべきだろう。それで皆が幸せになるわけであった。美也子と信太郎は全く偶然の機会に、深く知り合った。藤本は槙子と結婚した。ところがすぐに、信太郎に従軍命令が下った。美也子も槙子も必死になって引き止めたが、信太郎は出ていった。藤本は美也子に、信太郎は必ず帰って来る、それまで一年でも二年でも待たねばならぬと励ます。ちょうどそのころ、雑誌に書いた藤本の論文が特高の目にひっかかり警察に引かれていった。美也子は既にみごもっていた。当時美也子は両親を失っていて、美也子の親代わりをつとめていた叔父直彦は、取引先の商人に美也子を世話してやろうという魂胆でいたのが、信太郎の子が美也子の腹にあると聞いて激怒し、以後扶助一切を断るといってきた。美也子はその苦しい中で分べんする。折も折その晩、信太郎戦死の公報が入った。