1948(昭和23年)/9/26公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
製作小倉武志、脚本新藤兼人、監督吉村公三郎、撮影生方敏夫。主演は森雅之、原節子で、滝沢修、井上正夫、清水将夫、民藝より映画第一回出演の宇野重吉、それに加藤嘉らが助演。
終戦の前夜。青年将校沼崎敬太は危ぶまれる国家観により平和主義者の重臣戸田光政を暗殺し、その娘節子の短剣によって腕に傷をうけた。一九四八年、歳月は流れ、銀座裏明星ホールの一隅に一人の青年が魂を失っていた。彼は敬太であった。彼を手先に使っている佐川は表面新聞を発行し、裏面は悪徳の限りをつくしていた。彼の経営する明星ホールには父と家を失い転落した戸田節子がいた。節子の義兄平林はかつて鬼検事として自由主義者を牢獄にたたき込み、今は人目をしのんで佐川の新聞社の一隅に生きていた。節子は運命の皮肉によりいつか敬太に心ひかれ、敬太もまた節子を愛した。だが敬太はかつて犯した罪の、あの時の娘の面影を今、その節子に見出してがく然とした。だが今は愛する彼女に打ち明ける勇気がなかった。佐川は節子をわがものにするため敬太を殺そうとした。暗夜、敬太は佐川の手下に傷つけられ節子に救われた。敬太を介抱した節子は、彼の腕の傷痕に父の仇の人を見出した。しかし彼女は今敬太を愛しているのだ。そのころ佐川の某会社争議破りと民衆殺傷事件を察知した都下有力新聞記者高倉は佐川の新聞社にのりこみそこで平林の姿を見た。高倉はかつて平林のため冷酷な拷問にあい片輪になっていた。彼は逆上したが理性をもって心をおさえた。これを知った佐川は高倉と平林をけしかけ決闘させることにした。
毎日映画コンクール美術賞(浜田辰雄):毎日映画コンクール男優助演賞(宇野重吉)