1949(昭和24年)/2/4公開
配給:松竹(受託配給) 製作:えくらん社
えんくらん社第二回作品で、企画は中野泰介。製作は松本常保、関沢新一の脚本を清水宏が監督する。撮影を古山三郎、音楽を伊藤宣二が担当。出演は佐分利信、折原啓子、三谷幸子、日守新一の他、沢井三郎など。
リエは嘘つきだ。「嘘つき癖」だ。だがリエの嘘は人を陥れるようなものではなく、多くの場合罪のない嘘である。リエ自身は本当の事を言おう言おうと思いながら嘘を言ってしまう。今は船で別府から東京への旅をしているところである。乗船切符も嘘で買い、船客と語るのもみんな嘘である。素人のど自慢に応募して上京するあんまさんと知り合いになる。ある青年とも知り合いになる。その青年とも嘘にとりもってもらったのである。だからあんまさんはリエをある歌劇団の歌手だと思い、青年は令嬢だと思う。船中でリエは嘘のおかげで大変な人気者になる。リエの嘘にはたいへん魅力があるのである。東京への途中、神戸でも京都でもリエの嘘はいろいろな事件をまき起こしてしまった。京都では某華族の遠類者になりすましたり、いろいろ嘘事件が展開したが、いつもその度にボロが出かかると得意の嘘が解決してくれた。こんなことがあってとにかく東京へたどり着いた。リエはもう嘘をついてはいられなくなった。長い旅の間に青年に愛情を感じたのである。「私は今までの事、何もかもみんな嘘でした。私はお嬢様でもなければ、華族に親類などとんでもない。私はただ田舎の水のみ百姓の娘です。今迄のことは何もかもみんな嘘でしたけど、ただ一つ本当の事、それはあなたを愛しているということ、これは決して嘘ではありません」リエは本当のことを言い切って初めて本当の涙が出た。