1949(昭和24年)/4/20公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
山口松三郎が製作し、新藤兼人がシナリオを執筆、渋谷実が監督する。撮影には長岡博之が当たる。主演には高杉早苗と佐分利信。助演には杉村春子や久我美子をはじめ、清水一郎、佐田啓二、三井弘次らが出演。
木島孝子は十七の年にひとり娘であった為にせき立てられるように結婚し、君子を生んだ。しかし三年後、銀行家の夫はあっけなく死んでしまった。十九歳にして未亡人になった孝子は、君子をかかえて世間の苦労というものを考えねばならない現実に直面した。母の富枝は孫の君子を自分が母親のように立ち回ってくれた。戦時中を何とかきりぬけた孝子は、生活のために勇敢に世間の中に飛び込んで行った。孝子は銀座の酒場で働いたが、気持ちはまるで勤め人だった。その真面目な勤めぶりがマスターの信用を博して、今では酒場リラの借りられマダムであった。君子は十八になっていたが、女学校から引き続き音楽学校に通っていた。ある夜、酒場リラへ現れた客の一人に孝子は、以前隣人でありそして密かに心の中に抱いた想い人・間宮利夫に出会った。彼は現在友人たちと製薬会社を起こし重役の椅子にあって三十八歳の働き盛りである。家には彼の愛妻咲江と恵美子という、幼い子供があった。孝子もそれとなく知ってはいたが、しばらくぶりの再会でお互いに初恋の情が燃え始まった。昔彼等は隣あっていた関係、若き日の夢があり希望があったが、間宮はやがて外地の商事会社に勤務しなければならなくなって、孝子を後に残したのである。しかし孝子としては彼と一緒に行きたがっていたが、母は許さなかった。そして歳月は流れて今は、間宮と孝子は、しばしばめぐり会う様になってしまった。