1949(昭和24年)/4/29公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
小倉武志の製作。吉村公三郎が原案・企画を担当している。長瀬喜伴の脚本を「懐しのブルース」の姉妹篇として佐々木康が監督する。原田雄春が撮影を担当。音楽は万城目正。高峰三枝子が主演し、若原雅夫や佐分利信が助演する。
花村恵美子はお嬢さん芸がこうじて某レコード会社の専属になったが、一向にうだつが上らないので、文芸部の村田を盛んにつついていた。恵美子の許婚大井泰介は恵美子が結婚の事も考えないで歌手になろうとしているのを見てヤキモキするが、恵美子の決心は堅く、ひたすらステージに立つ日を夢見ていた。恵美子と村田がキャバレーに現れた時、そこの用心棒でかつて名ヴァイオリストとしてならした宮田浩三が戦禍による指の傷手をいたましく「俺の作曲をきいてくれ」と泣き叫び、狂人扱いにされて追い出されていた。そこに残された楽譜を村田は、これは恵美子の作曲だと会社に偽って恵美子の売り出しを図った。街々に流れるメロディー、傷心の浩三に響くその楽こそ、自分のメロディーではないか。浩三と将来を誓っていた飯屋の娘富子は恵美子に直談判に及んだが、却って村田の策略によって浩三は恵美子の顔に傷を負わせ懲役の身に落ちた。良心の呵責に悩む恵美子はそれからの毎日、差し入れを怠らなかったが、その好意が二人を結ばせる結果になった。浩三との仲を知った泰介は男らしく引いていった。しかし今度は浩三に富子という許婚のある事を知った恵美子は、浩三を富子の懐に返してやるのだった。恵美子の為に作った浩三の「別れのタンゴ」は遂に映画化される事になった。田舎のひなびた映画館に肩を寄りそう浩三と富子は、涙誘われていた。