1949(昭和24年)/6/29公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
久保光三の製作にシナリオは新藤兼人が執筆、大曾根辰夫が監督、撮影は太田真一、出演者は徳大寺伸、幾野道子、鶴田浩二らが主演するほか、宇佐美淳、民芸の清水将夫、それに井上正夫らが共演。
東京の街も銀河アパートもまだひっそりと眠っていた。管理人のトヨが新聞を配って三階の木島の室まで来て目撃したのは、殺されている妻梅子のそばに、鮮血の短刀を握ってたつ木島敏郎の姿だった。容疑者として敏郎は拘引されていった。敏郎は始め犯行を認めたが、第一回の公判で敏郎は無罪を叫んで卒倒してしまった。それによって再調査が行われることになった。けい眼の西川検事によって事件は意外な方向に進展した。というのは、敏郎が自供した証人が次々と召喚され、カストリ屋の親爺、交番の警官、入口ですれ違ったという牛乳配達等いずれも容疑者敏郎の自供に間違いなく、完全なアリバイが成立したからである。敏郎は復員後四年間というもの仕事もなく、妻梅子のバーで働く唯一の収入で生活していたため、夫婦仲は余り上手くいっていなかった。その夜も二人は一寸したことから口論し、敏郎はアテもなくアパートを飛び出した。日ごろなじみのキャバレーフェニックスに働くマユミのところに泊めてもらおうとも思ったが、思い返して傍にあったカストリ屋台でトラになりフラフラ歩いているところを交番の巡査にとがめられ、アパートまで送られたのである。敏郎が自分の室の扉を開けたとき、妻梅子はすでに殺害されていたのだ。敏郎は無意識に背中の短刀を抜きとってぼう然と立ちつくしていた。それを管理人のトヨが目撃したのである。犯人の姿はすでに見えなかった。事件が迷宮に入ろうとしたとき、銀河アパートに近い百貨店の守衛が意外な証言をしたのである。