1949(昭和24年)/9/29公開
配給:松竹(受託配給) 製作:新演伎座
「平次八百八町」につぐ新演技座作品で、下加茂時代長谷川一夫の作品を多く監督した冬島泰三が脚色監督を担当。主演の長谷川一夫は新東宝における「平次八百八町」につぐ自主作品。相手役には新東宝の山根寿子が出演。その他長谷川裕見子、桂木洋子、渡辺篤、河村黎吉らの他、小林重四郎が出演。
江戸・蔵前の札差伊豆方の一人息子金四郎は、お秋という女と知り合い親達の反対を押し切って夫婦になり、家を出て新内流しになって暮らしていた。しかし旅の空でお秋は重い病に冒され、金四郎の必死の手当ての甲斐なく、金四郎の幸福を祈りながら安らかに死んで行った。お秋に先立たれた金四郎はぼう然とした身をいつか江戸に近い品川の宿場に現わしたが、たまたまこの宿場の一隅の居酒屋「花柳」ののれんをくぐった瞬間、彼の五体に再び血しおのたぎる様な偶然に出会った。それはこの「花柳」のお内儀が、余りにも片時も忘れ得ないお秋の姿に生写しだったからであった。金四郎はそのままこの宿場に釘付けになってしまった。金四郎が「花柳」に通ううち、この家を隠れ家に数人の悪人達が悪事を企んでいることをかぎつけた。お秋の死にやくざ稼業の足を洗った金四郎は、御用聞の梅吉や目明しの弥吉の味方となって、悪人逮捕の重要な片棒をかつぐ事になった。事件を段々ほどいてゆくと、意外にもその悪事の張本人はお秋を夢に描かしてくれたお妻であった。委細を覚悟して金四郎の前に身体を投げ出したお妻ではあったが、金四郎はお秋をしのんで美しい思い出を持たせてくれたお妻を自身でなわ打つに忍びなかった…。