1949(昭和24年)/12/18公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
製作の絲屋寿雄、脚本の柳井隆雄、監督の高木孝一、撮影は竹野治夫。主演は宇野重吉、山内明、飯野公子、浜田百合子でこれに永田光男、青山宏、月丘夢路、清水将夫らが出演。
騎手信太郎は淀の競馬に出場のため北海道から遠征した。一つには幼い時不幸な別れ方をした弟二郎が淀の厩舎にいるといううわさを耳にしたからでもあった。二郎は淀の厩舎で新進騎手として母ゆきと暮らしていた。二郎は幼い時ゆき夫婦に拾われ、騎手であった夫の死後ゆきは女手一つで二郎を育て、二郎はこれを知らず母子は真の親子のように暮らしていた。同じ厩舎の調教師良作の娘千代は可憐な娘で、二郎と千代は愛しあっていた。いよいよ競馬は近づいた。淀ホテルには見知らぬ美しい女が人目をひいた。彼女二葉はパトロン安井に裏切られ、安井は今度の競馬に持ち馬を新しい情婦の名をつけて出場させた。嫉妬に燃えた二葉は安井の馬を敗北させて腹いせをしたく、その騎手二郎に近ずいて彼をろうらくしようとした。美しい中年女の魅力と手練にいつしか二郎は夢中になった。これを知ったゆきと千代は心配したが、二郎の心は放馬の如く二葉に傾いた。競馬場に来た信太郎は二郎が弟であることがハッキリするとともに、一切の事情を知り、二郎たちを不幸にする二葉を憎み、彼自身二葉に接近して二郎を救おうと思った。二葉も信太郎に興味をもった。そして信太郎の計画は成功するかに見えたが、二郎は恋がたき信太郎の出現で、心すさんだ。ある夜、信太郎と助手との話から、信太郎の真意をぬすみ聞いた二葉は、己の醜さに悔い改める。レースの前夜、二郎は二葉に、敗ければ俺のものになるかと迫ったが、今や二葉は敗けてくれなくてもいいと言う。二郎は裏切られたと思い、その夜酒場でヤケ酒をあおる…。