1950(昭和25年)/6/4公開
配給:松竹(受託配給) 製作:南海映画
脚本は柳川真一で、高木孝一が監督。撮影は行山光一担当。主演は原保美、山村聡、高杉妙子、鈴木美智子などで、それに逢初夢子、菅井一郎などが出演する。
若い大学教授紙谷良介とその妻淑子は久しぶりに研究をかねての楽しい旅行をここ南紀に求めて一週間、今旅の思い出を残して東京へ帰る途中だった。良介が親友宇野と出会ったのはある漁師町の近くの車内であった。宇野はその漁師町にある年に一度の鯨祭りに誘ったが淑子は大阪に叔母が待っているというので良介を宇野にたのんで大阪へ直行してしまった。良介にとっては結婚以来妻とたとえ一日、二日にせよ別れるのは初めてだった。宇野と鯨祭に出かけた良介は、偶然弥生を知ったのだ。二人が泊まった宿の姪というのが彼女だった。みなし児であるということ、南国の娘らしく、情熱を秘めている純情さがふと彼の胸中をかすめた。翌日良介がつりに出かけ、弥生が彼の弁当をとどけに行ったときはげしい雷雨がおそった。運命のいたずらが彼らを結んだ。そして二日、三日列車不通の間二人は二人だけの愛情に浸ったが所詮は別れなければならない二人だった。大阪へ帰った良介は、妻の顔をみると、心が重くなった。早く東京へ帰ろうという良人の何かいらだたしさを女の心で淑子は知った。何かあったに違いない。妻の心に暗い影がひろがった。弥生が追うように大阪へ出てきたのはその翌日だった。