1950(昭和25年)/10/7公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
川内潔志の原作を柳川真一が脚色し、高木孝一が監督している。出演者は花柳小菊、喜多川千鶴、月丘千秋、宇佐美諄などが出演している。
北原信子は孤児であったが、お蝶という養母に育てられ、流行歌手として成功した。その新作発表会の夜、お蝶の口から実は彼女の実父が生きているということを聞かされた。父はやがてレコード会社の社長に就任する大沢信作で、小唄の菊丸として人気のあった信子の母を身ごもらした上、捨て去ったのだとその当時のいきさつを話した。信子はお蝶の言葉をそのまま信じ込んで、大沢とその娘真佐子に対し憎悪に燃えた。真佐子が、信子のヒット・ソング「涙のブルース」の作曲家志村聖一に、秘かな思慕の心を寄せているのを知ると、志村を真佐子に近づけまいとあらゆる手段を尽して志村を自分へ引きつけようとした。志村が交通事故で負傷をして入院すると、信子は病院へ駆けつけて看病をし退院をすると、その家へまで押しかけて、一歩も真佐子を寄せつけまいとした。しかし大沢信作と菊丸との悲恋の真相は、お蝶が当時の菊丸の様子で察していたものとはよほど食い違っていて、信作は毛頭菊丸と別れる気がなかったのに、菊丸が信作の将来を考えて身を引いたものであった。信作は、そうして姿を消した菊丸の行動を自分への裏切りだとばかり思い込んで永い年月を暮らして来たのであった。菊丸が旅先で淋しく死ぬとき、菊丸一座の座長をしていた村木が、彼女がずっと記していた日記を手に入れていて、それを成功した信作に買い取ってくれと言って持って来たことから、信作は菊丸の真情と、自分との間に信子という子供のあることを知った。