1951(昭和26年)/2/10公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
中村八朗の原作小説「桑門の街」より、陶山鉄が脚色、岩間鶴夫が監督している。製作は石田清吉。主な出演は佐野周二、佐田啓二、折原啓子、杉村春子と花柳小菊など。
松山裕天は桑門の街、長野の善光寺の末寺西方院の次男であったが、復員して帰って見ると兄の順天が戦死していたため、家門を何よりも大切に思う母や親類たちの取り決めで、否応なしに住職を継がされ、嫂を自分の妻に直された。裕天はこの押しつけがましい周囲の処置に反感を抱いて夜ごと町のいかがわしい地域へ足をふみ入れ、酒に酔いしれていた。しかも嫂英子は、裕天に冷たくあしらわれればあしらわれるほどまめまめしく仕えて、よけい裕天をいら立たせた。ある夜飲み屋で、土地の顔役松井組の吉川に裕天はなぐられ、それが縁で、戦前この土地の顔役の息子増内桂助と知り合った。桂助は善光寺境内で玩具売りをしていたが、父のあとをついだ兄の兵六は、新興の松井組に押されてしまっていた。そうした間に、裕天は勤番の夜、本堂で幼馴染みの連池坊主徳田玄成と議論の末乱闘になったことから大僧正の怒りにふれ、玄成と共に幽門を申しつけられ禁足を命じられた。しかし裕天の夜の外出は止まず、本堂へ提出する写経は英子がひそかに代わって果たしていたので、それでも無事禁足を解かれる日が来た。