1951(昭和26年)/8/29公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
小出孝が製作に当たり、婦人公論掲載の三島由紀夫の原作から柳井隆雄と、やはり柳井と共同で脚本を書いた光畑碩郎が協力している。撮影は生方敏夫である。主な出演者は河津清三郎、木暮実千代、森雅之、津島恵子、それに信欣三、村瀬幸子、高橋豊子、十朱久雄など。
村松恒彦と郁子は評判のドラクロワのデッサンを見に銀座のある画廊へ立ち寄ったとき、楠に出逢った。彼は恒彦とは学習院時代の友達であったが、何よりも初めて見る郁子の美貌に惹かれた。それから楠は人妻である郁子に、あらわな恋情を示しはじめ、最初はそうした楠に反感を持っていた郁子も次第に彼にひかれ、そのアパートをたずねて接吻を許してしまった。その帰路郁子は恒彦の秘書沢田に見つかってしまい、それを種に、沢田は恒彦の留守の暴風雨の夜、郁子の心の虚につけ込んで彼女を自由にしてしまった。沢田はこれを破産の瀬戸ぎわにある楠に得々とつげた。楠は郁子を鎌倉へ誘い出し、もし真実自分を愛しているのなら、自分たちが今夜一緒に鎌倉の宿に泊まることを夫に電話で告げるようにというが、さすがに郁子はそれが出来なかった。楠はそういう郁子を軽蔑し、自分の欲しかったのは彼女の肉体ではなかったのだといって去った。郁子は楠とのはかない悲劇的な恋を胸に自殺し果てた。