1952(昭和27年)/2/15公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
山口松三郎の製作。富田常雄の原作を、川島雄三が脚色・監督したもので、撮影を西川亨が担当。出演は佐野周二、津島恵子、子役の設楽幸嗣に、角梨枝子、高橋貞二、その他三井弘次、徳大寺伸、幾野道子など。
長屋に住む青年医師荒木勇作は俗称「とんかつ大将」と呼ばれ、みんなに親しまれていた。純情の艶歌師町田吟月と兄弟のようにして同居していたが、吟月は浅草裏の飲み屋「一直」の女主人菊江に惚れて、一夜勇作を誘って飲みに行った。折も折、菊江の弟の周二が喧嘩で怪我をしてもどって来たので、勇作はその手当をして近くの病院へかつぎ込んだ。ところがその病院の女医が、昼間勇作が自動車にぶつけられた太平老人に代わって、さんざん油をしぼってやった自動車の主真弓であった。てきばきと手術をする勇作の姿に、菊江も真弓もひきつけられて行った。やがて傷の直った周二も勇作に諄々と意見され、不良から足を洗うべく、自主して行った。勇作には学徒出陣の時未来を約束した多美という恋人があったが、終戦で復員して帰って見ると、その多美は彼の親友丹羽と結婚して利春という子供さえもうけていた。しかも生活の苦しさから、つい多美が百貨店で万引きをして捕らえられたのを勇作が救ってやったことを、丹羽はかえって恨みのこもった眼でみるのだった。一方真弓の病院では、悪徳弁護士大岩のすすめで、勇作たちの住む長屋を取り壊す計画をすすめていたが、勇作は長屋の人々の困窮を想って反対運動を起こした。