1952(昭和27年)/2/29公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
製作は山本武。井伏鱒二の原作から斎藤良輔が脚色し、渋谷実が監督に当たっている。撮影は長岡博之が担当。主な出演は、柳永二郎、増田順二、鶴田浩二、淡島千景、佐田啓二、角梨枝子、三國連太郎、岸恵子などの他に、田村秋子、中村伸郎、十朱久雄、長岡輝子、多々良純などの新劇陣や新派の市川紅梅などが加わっている。
戦争で一人息子を失った三雲医院の八春先生は甥の伍助を院長に迎え、戦後再出発してから丸一年の記念日、伍助はこの日看護婦の瀧さんたちと温泉へ出かけて行き、三雲医院は「本日休診」の札を掲げた。八春先生はこの機会にゆっくり昼寝でもと思っていた矢先、婆やのお京の息子勇作が例の発作を起こしたという。勇作は永い軍隊生活の悪夢にまだ折々なやまされ、八春先生はそのたびに部隊長となって号令、部下の気を鎮めてやらなければならぬ。勇作が落ち着いたら、今度は警察の松木ポリスが大阪から知り合いを頼って上京したばかりで、昨夜遅く暴漢に襲われたあげく持ち物さえうばわれた悠子という娘をつれて来た。そこへ十八年前帝王切開で母子共に八春先生に助けられた湯川三千代が来て、悠子に同情してその家へ連れて帰った。しかし八春先生はそれでも暇にならず、砂礫船の船頭のお産あり、町のヤクザ加吉が指をつめるのに麻酔を打ってくれとやって来たのに、こんこんと意見もしてやらねばならず、悠子を襲った暴漢の連れの女が留置場で仮病を起こし、兵隊服の男が盲腸患者をかつぎ込んで来て手術をしろという。かと思うとまたお産があるという風で、「休診日」は八春先生には大変多忙な一日となってしまった…。
毎日映画コンクール監督賞(渋谷実):ブルーリボン賞脚本賞(斉藤良輔)