1952(昭和27年)/7/9公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
製作は山口松三郎が当たり、富田義朗が脚本を書いている。佐々木啓祐が監督を、鶴見正二が撮影を担当。出演は土紀就一が抜擢されて主演し、安部徹、水原真知子の他、吉川満子、小藤田正一、島村俊雄など。
S湖畔の丘の上に古ぼけた記念碑が立っている。その表には「松本勇作君遭難記念之碑」と書かれているが、ある日ハイキングの若者たちに問われるまま、村の一老人が次のような物語をした。今から四十年前、力の強いことを喜ぶこの村で、村一番の力持ち、樵夫の後藤健吉が、村の青年たちを牛耳って青年会の会長を兼ねていた。一膳めし屋「鈴屋」の一人娘順子は青年たちの憧れの的であったが、健吉は当然順子を自分の女房にと一人で心に決めているのだった。宵祭りの日、十五年ぶりで健吉の幼なじみの松本勇作が村へ帰ってきた。この村の小学校の教師として赴任してきたのだった。勇作は「鈴屋」に下宿しながら学校へ通っているうちに、自然に順子と親しみを増していったが、健吉はそれが面白くなく、やめていた酒とバクチに手を出し始めた。健吉の生活が荒んでいくのを見て、勇作は順子に対する想いを諦めなければならないと思い、順子も勇作の心が分からないままに、健吉から強引に迫られて彼と結婚してしまった。二人の間には子供まで生まれたが、この結婚生活は決して幸福とはいえなかった。健吉には相変わらず酒浸りの日々が続いたからだった。ある日湖を越えて夫婦が両親に初孫を見せに行く途中、湖上で大暴風雨にあい、舟が転覆しそうになった。この時勇作が釣り舟をこぎ出して彼らを救ったが…。