1952(昭和27年)/8/28公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
製作は市川哲夫で、吉川英次の原作から、柳川真一が脚本を書き、内出好吉が監督に当たっている。撮影は石本秀雄。主な出演者は、水島道太郎、北上弥太朗、喜多川千鶴、草間百合子などで、薄田研二、戸上城太郎、海江田譲二などが助演。
徳川三代家光の時代、幕府強化のため、取潰しになった外様諸藩のなかで、肥後加藤藩の浪士たちは、その衝に立った柳生但馬守を仇としてつけ狙っていた。但馬守には十兵衛、又十郎の二人の息子があったが、兄の思慮深いのに引き換え、又十郎は自由奔放な性格であった。しかし二人共父思いで、剣の道には非常にすぐれた力量を持っていた。但馬守暗殺を指揮する蒲生民部の妹お駒は水茶屋に働き、彼女の許に通ってくる又十郎から、但馬守の身辺の情報を得ていたが、更にその妹由利も、柳生家の小間使に住込むことに成功した。生来奔放な又十郎は、由利の楚々たる姿に心を奪われるようになった。ある日一人の浪人が柳生道場に現われ、但馬守に手合せを申込んだ。又十郎は応対に出てその殺気立った眼つきから、父を狙う刺客と察し、彼の相手となって木剣で打ち殺してしまった。死体は裏庭に葬られたが、その墓に花を捧げる由利の姿を見た十兵衛は、彼女と暗殺者一味との間に何かのつながりのあることを察した。又十郎は一途に由利を独占したい心にはやり、やがて十兵衛と由利の間を嫉妬する迄になった。そして但馬守が江戸城へ登場の供を仰せつかった十兵衛は万一を心配して由利を土蔵に閉じこめておいたが、又十郎は駆け落ちに同意した由利の言葉を信じて彼女を放してやった…。