1953(昭和28年)/3/12公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
弊衣破帽派の旧制高校生堀尾吉晴、岩崎悌四郎らは、教師連が本省の視察官をダシに飲み会をやる、という情報に大憤激、料亭に押し上った。座敷を違えて踏込んだ彼らは、教師ならぬ町の有力者、横地弁護士を叩きつけ、その責任を負って人徳者安藤校長の辞職という大騒ぎになる。長男玉男の温和しさとひきかえ、次男吉晴のこの硬派ぶりに、父彦平、婆やのたきは青息吐息である。…三年後。今は大学生の吉晴は学生委員やら同輩のアルバイト斡旋やらにやたらに熱をあげているが、悌四郎はちゃっかりと鈴木初子なる深窓の令嬢と愛を囁き、証券会社への就職が決まるや、吉晴を仲人役依頼の使者に仕立てて高校時代の校長、今は彼らの大学の教授である安藤氏の許へさしむけた。安藤宅で吉晴は明朗な女子学生片岡道子に会う。初子の友人という彼女の尽力でこの縁談はめでたく成立した。道子がねづよく勧めるまま極東紡績の入社試験を受けた吉晴は見事合格、はじめて道子が社長令嬢であったことを知る。しかし、上役の毛利部長が株の買占めで会社乗っ取りを策していることを、兜町の悌四郎から聞き、鉄拳沙汰に及んで会社をとびだした。安藤教授の力添えで新聞社入りをした彼は悌四郎と協力、首尾よく毛利の非を暴いたが、彼自身も大怪我をする…。
金庫破りの隼三吉は、刑期を終えて刑務所を出所すると、出迎えてくれた老刑事山田文吉に誓った通り、街頭靴磨きとなって更生のスタートをした。ある日地下街の入口で盲目の花売娘を見て同情し、それ以来毎日花を買ってやった。少女は直子といって病気の祖母を養っていた。直子と仲良しになった三吉には、自分が街頭の靴磨きだとは明かさず、会社員と偽っていた。ある日、直子を連れてデパートの屋上遊園地へ行った三吉は直子の眼が金をかけて手術をすれば治る見込みがあると知って、どんなことをしても手術させてやりたいと思い込むようになった。山田刑事が心配していたように遂に三吉は昔の仲間にひきずられて金庫破りをやり、直子にその金をとどけて姿をくらました。それから二週間、直子の目の繃帯がとれる日、三吉は病院に姿を現わした。山田刑事は繃帯のとれるところを三吉に見せてやろうと、その友人を装って一緒に直子の前に立った。けれど三吉を立派な男と思い込んでいる直子には彼が見分けられなかった。三吉小父さんに会ったら早く逢いたいと伝えて欲しい、という直子の言葉を後に三吉は淋しくひかれて行った。