1953(昭和28年)/4/1公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
田畠恒男の第二回監督作品。製作は田岡敬一、脚色は柳井隆雄である。平林孝三郎が撮影を担当し、若杉英二、大船映画初出演の千秋みつる、渡規子などの他、小園蓉子、草間百合子、有島一郎、吉川満子、三井弘次などが出演。
一瀬孝作は善良で世話好きな紳士だが、妻けい子は猜疑心の強いヒステリックな女である。夫の親友宇野が姿を見せても、そのアルコール好きを嫌って満足に挨拶すらしなかった。孝作が長女公子と一緒にするつもりで育てた養子修一も、成人するにつれ、このような義母と折り合わなくなった。彼は優しい公子は愛していたが、結婚、そして一瀬家の跡目をつぐとなると躊躇を感じるのである。たまたま公子とは逆に勝気一方の次女春江が、孝作、修一の二人が二人ながら見知らぬ女と歩いていたことを暴露し、逆上したけい子は鋭く孝作を問いつめる。実際は出版事業で失敗しかけているけい子の兄正宗と、愛人の和田たまとの別れ話を孝作が取り持っただけであった。正宗の事業の失敗はまた、これに相当投資していた孝作の命とりにもなりかねなかった。兄の口から事情を知ったけい子は、夫にじぶんの非を詑びる。他方修一は、春江やけい子の冷たい難詰に心を刺され、家を出た。その置手紙で、過日春江が見とがめた修一の連れの女性は、実の妹章子であることがわかり、一同は軽率を深く悔いた。春江が公子をしょっぴくようにして修一兄妹の連れ戻しに出かけた後、宇野が微醺を含んで飄々とあらわれる。