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前川頼子、菊島道子はアパートに共同生活しながら同じ会社に勤める親友である。ふとしたことから二人は藤本宙五という青年をしり、戦死した恋人に生写しの彼に道子は胸をときめかすが、むしろ相手は趣味や性格のあう頼子に心を惹かれる。彼女らの友情は互いに恋を譲りあい、とどのつまり二人が二人ながら姿を消す。五年を経て、宙五は社用で渡米することになり、固疾を治そうと耳鼻科医戸倉修吉の診察をうける。戸倉の妻が意外にも道子であった。五年頼子を想いつづけた彼は早速その消息を尋ねるが、道子にも要領をえなかった。渡米当日、パン・アメリカン機の出発まであと三十分という間際、突然かけつけた戸倉は頼子の居所がわかったことを告げる。結婚生活に破れた彼女は、いま偶然にも戸倉の勤める病院で闘病しているのだ。肺の重患である。急遽かけつけた宙五は刻一刻出発時間に追われつつ頼子に心をうちあけ、彼女の変わらぬ愛をも確かめた。やがて時間。一旦は空港にむかった彼も、思いなおし、彼女の枕頭にとってかえす。一切の将来を投げ捨て、頼子と生きるつもりであった。