1953(昭和28年)/12/15公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
『主婦之友』所載富田常雄原作の同名小説の映画化で、中山隆三、佐々木啓祐が脚色、監督を担当している。撮影は森田俊保、音楽は万城目正。キャストは宮城千賀子、幾野道子、三橋達也、若杉英二、藤乃高子、市川春代、北龍二など。
家元杵屋栄作について母民子と共に長唄の師匠をする山路朝代は、弟子の篠井京子の兄で昭和パルプに勤める吾郎と愛し合っていた。それだけに栄作の奨める縁談の相手東京商事専務宇佐美誠一には好意を示さなかった。朝代の学友恵子は娘のタマエと叔父田辺孝作夫婦の家に寄寓し、夫南条英吉の帰還を待ちわびていた。しかし昭和パルプに勤める彼女は、社長峰岸浩輔の息子・宏の寄せる愛情に、何時しか好意を感じていた。昭和パルプと取引のある宇佐美は吾郎の代理河田を抱き込んで不正を働いたので、吾郎はその責任で転勤され、これを追った朝代は病気で途中倒れた。朝代の吾郎に対する強い愛情を知った民子は、今は宇佐美との話を断りに栄作の家を訪れたが、栄作の激昂によるショックで急死する。一人になった朝代の許を訪れた宇佐美は暴力で彼女を犯した。宏は父の反対を押し切って恵子と結婚するが、直後英吉が帰還した為、恵子は自殺を図る。重体の恵子の枕頭で英吉を慕うタマエの姿を見た宏は潔く身を引く決心をした。河田から宇佐美の不正を聞いた吾郎は、宇佐美を詰問し、打ちひしがれた朝代を抱いた。その頃、横浜港を出帆するアメリカ航路の汽船の上に、感慨深げな宏の姿が見えた。