1954(昭和29年)/5/5公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
“スポーツ・ニッポン”に連載された鹿島孝二の原作「火炎樹」より池田忠雄が脚色し、芦原正が監督している。撮影は竹野治夫、音楽は木下忠司。出演者は大木実、若杉英二、草間百合子、月丘夢路、大坂志郎、大原みゆきなど。
角丸商事の社員三森恭平は、二八才だが立派な八字ヒゲをはやし安田課長に憎まれている。大学の恩師笠井博士の令嬢秀世から就職を頼まれた恭平は、知人猪狩の経営する京極書房に世話をした。秀世は三十才の独身で、相変わらず美しかった。大川社長は恭平のヒゲを見こみ、夫人の兄の経営する東洋鍛造の経理目付として出向させる。この会社は社長の病気をいい事に、片柳専務一派が悪事を企み、田代は角丸の安田と連絡を取っていた。恭平はスパイ扱いされ、技師長小山田だけが公平に付き合ってくれた。工場一の乱暴者という職工長は、片柳の腰巾着小島の命を受けて恭平を狙っている。ある夜恭平は猪狩とキャバレーに行き、やくざの群と喧嘩し、友人岡本は頭を殴られて負傷し、女給珠実の看護を受け、二人の間に恋が生まれる。やくざの親分小仏はかえって恭平の度胸を認めて、子分たちの非を謝した。京極書房の小宮厚子、鍛造会社の三角悦子、芸者千代菊等は皆恭平に好意を持つ。岡本は珠実と結婚し、海外に職を得て出発する。彼の勧めで恭平はヒゲをそり落とし、見違えるような美男子になった。乱暴者の権は彼を殴ろうとして逆に叩きつけられる。田代と安田は片柳を抜いて悪事を企み、裏切られた片柳は非を悟って辞職し、鍛造会社の騒ぎは終わった。