1954(昭和29年)/9/8公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
中野実の原作を野原清が脚色、原研吉が監督、森田俊保が撮影に当っている。浅茅しのぶ、岸恵子、大木実、紙京子、片山明彦、川喜多雄二と北原三枝らが出演。
女医の澪子は妹春子と銀座の横丁で歯科医院を開業していた。父盛近は大学教授を定年で退職し、辻堂で一人間借生活を送っている。澪子はたとえ自分は犠牲になっても、春子だけは恋人の晋と結婚させてやりたいと思っていた。塚本達也という男が、ある日澪子を訪れた。達也は自動車工場に勤めているのだが、友人の尾島三平が澪子を見そめたという。澪子の医院の隣は菊の家という料亭で、三平はそこの常客だった。そして菊の家のおかみお蝶は達也にぞっこん参っているが、当の達也は澪子が好きなのだ。しかし三平の手前、彼はそれを秘めていた。達也の伯母で未亡人の塚本夫人は彼に藤村マチ子との結婚を強いるが、これを嫌った達也は澪子に一日だけの恋人になってくれと頼む。二人は一日を江の島に遊び、互いに心のふれ合いを感じた。三平はテレビ会社の重役で、マチ子を秘書に晋を社員に採用した。晋の役目は澪子を監視する事だった。達也から正式に澪子を紹介された三平は、大喜びでその夜達也を菊の家に招待する。三平の喜びに引きかえ、淋しさをまぎらす酒に酔った達也は菊の家でお蝶と共に酔いしれて眠ってしまう。それを知って悲しんだ澪子は熱海へ家出した。お蝶も三平も、初めて二人が愛し合っていた事を知った。