1955(昭和30年)/1/29公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
中野実の原作から橋田寿賀子が脚本を書き、萩山輝男が監督した。撮影は生方敏夫である。主な出演者は、桂木洋子、川喜多雄二、大木実、片山明彦、七浦弘子、水原真知子、菅佐原英一のほか、坂本武、沢村貞子、吉川満子、高橋豊子等である。
M大法科学生の富岡乃婦は、日本橋で広告塔のアナウンサーをアルバイトにしていた。ある日高校時代の級友輝子と一緒にクラス会に出ると、結婚相談所を始めた旧師角野周子に候補者の押し売りをされ、苦しまぎれに友人素子の兄信策を婚約者に借用した。信策は新聞社のキャメラマンである。素子に出したことわりの手紙を見て彼は憤慨するが、偶々学生アルバイトの取材で、勤務中の乃婦を写しその美しさに惹かれた。東京病院で看護婦をしている輝子は、将来僧侶となる南善堂と婚約中だが、人形芝居にばかり夢中になる幼馴染の善堂が少々飽き足りない。輝子は受け持ち患者の内山たみに見込まれ、息子二郎の嫁にと退院後内山家に招かれたが、流行歌手として売り出し中の二郎は信策の友人で素子と好意を持ち合っていた。乃婦の父四八は、永い間男やもめで小料理屋を経営していたが、不遠慮なキャメラマンの信策に反感を持ち、松下材木問屋の若旦那が乃婦を望んでいると聞くと、その話をまとめたがった。素子は乃婦の身代わりで松下に会ったが、松下の純真さに深く胸を打たれた。乃婦は父が怒りっぽいのも淋しさ故と思い角野に四八の結婚の斡旋を依頼したが、老嬢の角野は見合の席に自分で現れ四八と意気投合してしまった。輝子は内山家に日を送りながら善堂を忘れられず、引き取りに来た善堂の父と二郎の母の間の板ばさみになり家出したが、乃婦達の温い計いで善堂の許に帰った。