1955(昭和30年)/3/8公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
『平凡』連載の原作を沢村勉が脚色、田畠恒男が監督し、布戸章が撮影を担当。主な出演者は草笛光子、高橋貞二と紙京子、大木実、淡路恵子など。
幼い時に両親を失った志津子は、父の親友で政界や財界に勢力を持つ御手洗鉄造に養われ、長男亮一の婚約者であった。亮一の妹京子は、兄の友人浅岡をめぐって志津子を敵視した。ある時、皆で志賀高原に遊んだ志津子は、鳴瀬潤之助に会って互いに心を惹かれた。東京へ帰ると老女中のお里が御手洗家から暇を出されて神戸へ帰るところだった。その後で小羊学園の田原から、お里が実母であると聞き志津子は家出してその後を追ったが行方が知れない。傷心の彼女は車中で知りあった片桐浜を頼って淡路島のホテルで働くうち、社用で出張した潤之助と再会した。彼女は喜びに溢れたが、潤之助を慕う社長令嬢明美に邪魔され、折から島へ来た亮一の目をさけ、小羊学園の田原すずを頼って行った。その頃二十年の刑を終えた鈴木久平が御手洗家を訪れ、激論のはて夫人を傷つけた。この久平こそ志津子の実父だった。折から潤之助は会社の不正事件の裏に御手洗がいる事を知り、辞表を出して信州の牧場に去ったが彼はここで働くお里が志津子の母とは知らなかった。浅岡は小羊学園で志津子に会い、彼女に深い愛情を抱いた。久平の公判で志津子は初めて彼が実父だった事を知った。御手洗の仕組んだ悪事は露見して久平の無実の罪は晴れ、親子三人は喜びの涙にくれた。そして浅岡は志津子の心が潤之助にある事を知り、潔く身を引いて二人の幸福を祝しつつ印度へ旅立った。