1955(昭和30年)/6/28公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
小川正が脚本を書き、芦原正が監督。撮影は竹野治夫、音楽は池田正義が担当。出演者は近衛十四郎、香川良介、由美あづさ、草間百合子など。
豪放磊落、槍を取っては江州膳所藩無双の使い手であった俵星玄蕃は、ある日、城主本多内膳正から突然、家中きっての美人頼母木主水の娘早苗との養子縁組を高飛車に言い渡されたのを不満に思って、馴染みの料亭鮒清の主人清助を相手にして気炎をあげた。その帰り途、泥酔してしまった玄蕃は浅野公の行列に些細なことで無礼を働いたが、内匠頭の温情に救われた。しかしその情に甘んじることのできない玄蕃は、主水や彼に強い愛情を注ぐ早苗を振り切って旅に出て行くのであった。その後、江戸で開いた道場をやくざの親分孫三に貸してしまうほどすさんだ玄蕃を父主水には内密に訪れた早苗は、当惑する玄蕃に心からつくすのだった。しかしこの早苗の出現は、玄蕃に情炎を燃やす孫三の娘お小夜の心を強く焦らだたせた。その頃、内匠頭が刃傷に及び切腹、亡君の仇を討たんとする赤穂浪士の面々は、姿を変えて江戸に集まり、吉良方の動静を探っていた。ある日、玄蕃の腕のほどを知っていた上杉家の用人、相良右京から仕官を進められた玄蕃は、一旦は承知したものの、早苗や孫三、お小夜、子分の三公までが赤穂浪士の味方をするのには、さすがに考えざるを得ないのであった。だが、そばやに身をやつした浪士杉野十平次の知らせで、長洲藩士になりすました赤穂浪士の仕官の勧めを、玄審は堅く辞した。そして槍を小脇に「まこと武士の心を見せてやる」と赤穂浪士の援助に、雪の両国橋へ駈け出す玄蕃の姿が見られた。