1956(昭和31年)/1/15公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
佐多稲子の小説を松山善三が脚色、川頭義郎が監督、楠田浩之が撮影を担当した。主な出演者は高峰秀子、高峰三枝子、芥川比呂志、丹阿弥谷津子、大木実、笠智衆、滝花久子、設楽幸嗣少年など。
郊外の都営住宅に住むサラリーマンの三田村俊二は妻を喪うと、歯科医の幸子を後妻に迎えた。幸子は結婚後も実父の医院へ手伝いに出かけるので二人が出勤したあとは、先妻との間に生まれた修と俊二の妹で母代りの喜世子の二人暮らしというわけである。やがて幸子の実家の肝入りで、喜世子が硫安工場で働く藤田と見合いをしたころ、俊二は名古屋に転任ときまった。ところが幸子の母は一人娘の彼女を手許から離す気になれず、幸子もまたそうした母にひきずられているようだった。俊二はひとりで名古屋に発った。喜世子は急に冷たくなった藤田の態度が納得できず、勇を鼓して会ってみると、意外にも幸子の母から縁談解消の申し入れがあったからだと判った。だが、二人の心は却って強く結ばれた。喜世子の手紙で委細を知った俊二は、幸子と別れる覚悟で上京したが、一方、幸子も修のためによき母となる決心で実家から帰ってきた。俊二の呼び声を聞きながら、裏の原っぱで石を投げている修の眼は、うれし涙で濡れていた。
世界映画祭ハリウッド外人記者協会ゴールデン・グローブ外画賞:ブルーリボン賞新人賞(川頭義郎)