1956(昭和31年)/5/25公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
昭和十一年、同じく松竹大船で野村浩将監督、川崎弘子、佐分利信主演で映画化されたメロドラマの再映画化。小島政二郎の原作を斎藤良輔が脚色し、原研吉が監督した。撮影は森田俊保、主な出演者は佐竹明夫、杉田弘子、須賀不二男、高橋貞二、大木実、菅佐原英一、七浦弘子、淡島千景など。
有村商会の社長有村喜助は強請に来た小板橋大助を一時の憤怒から射殺してしまい、総支配人の矢野昭はその罪を引き受けて姿を消した。喜助は矢野の妻嘉子と息子準一を世話していたが、彼が死ぬと息子の恒也は彼女をものにしたい下心から、嘉子にバー“海つばめ”をまかせた。だが嘉子は彼から逃れて海辺にある実家に帰った。しかしそこでも漁師の父勉蔵が時化で死ぬと、美しい嘉子はかねて彼女に執心の網元虎一に迫られ、円海和尚の忠告で再び上京した。ところが勤めた会社が火事に見舞われ、嘉子母子は有村家で同僚だった酒井千代のアパー卜に世話になる。しかし千代の生活も楽でなく、また近く貧乏画家の伊藤と結婚する筈なので長居もできなかった嘉子は夫の帰りをひたすら待ったが、殺された小板橋の子分近藤も親分の仇を討とうと天野を待ちうけていた。倒産に瀕した恒也は、先に“海つばめ”で嘉子に魅せられた財産家草間俊夫と妹の珠実とを結婚させて会社を建て直そうと考えた。だが草間は夫を待つ嘉子の心根に打たれて彼女を諦め、サンパウロに渡った。