1956(昭和31年)/8/28公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
愛情のよろこびとかなしみを複雑な現代の中に描いたメロドラマ。片岡鉄兵の原作から椎名利夫が脚色、中村登が監督、生方敏夫が撮影を担当。主な出演者は高橋貞二、有馬稲子、岸恵子、大木実、山村聡、その他丹阿弥谷津子、玉月優子、加東大介など。
日本レーヨン社長松沢元彦令嬢千晶の寝室に怪漢瀬川清三が侵入。目的が強盗か痴情かに世間は好奇の眼を注ぐが、警察の訊問にも彼は金欲しさからと言い張るだけ。松沢は娘に傷がつくのを恐れ、自分が世話する増山豊子の経営する婦人雑誌に千晶の弁明手記を載せようと計るが、千晶は拒む。彼女に立ち直る希望を与えたのは社用で上京、豊子の家に寄宿する戸山芳夫だった。周囲の噂に千晶はたまり兼ね、自分名義の大金を持ち家出、大阪へ戸山の後を追う。豊子も急ぎ西下。大阪で再会した千晶と戸山は結婚を誓うが、それを悲しむのは戸山の下宿の娘舟瀬雪枝。彼女は失意をまぎらすため、いつしか競馬に熱中する。一方、豊子は雪枝の母民子と計り、上流の子女を集めての大ファッション・ショウ開催の手筈を整え、他方千晶を騙し財産横領を計る。だがこの横領計画は松沢のため破れ、一度手にした大金も奪い返される。同じ日、政治ゴロ橋本と競馬場へ出掛けた雪枝は偶然松沢に逢う。彼は清純な雪枝に興味を抱き誘うが、娘千晶を思い出し、一指も触れず夜を明かした。翌朝、雪枝は千晶を訪ね戸山のことを頼むと悄然と街へ消える。その後姿を見る千晶は戸山を雪枝に返そうと決心、内緒で東京へ帰ってしまう。だが同じ頃、雪枝は自ら命を絶ち、半狂乱となった民子に豊子のショウは中止。千晶は進んで瀬川のため証人となり、かつて彼に衝動的に身を許したことを告白。瀬川侵入の目的が彼女に復縁を迫るためだったと立証する。