1957(昭和32年)/2/20公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
志賀直哉の名作“正義派”と“清兵衛と瓢箪”の二作品より斎藤良輔と馬場当が共同脚色、渋谷実か監督する文芸篇。撮影担当は長岡博之。主な出演者は佐田啓二、久我美子、田浦正巳、野漆ひとみ、桑野みゆき、ほかに三好栄子、山内明、望月優子、伊藤雄之助、三井弘次、高橋豊子、山形勲など。
東京の下町に住むお京婆さんは、終戦この方、闇屋をしながら、東南バス修理工の一人息子清太郎の将来を楽しみにしている。頑固だが仲々の人情家。清太郎の先輩で同じ会社の運転手藤田に、安アパートを世話したりする。藤田は親の許さぬ恋人葉子と内縁の結婚をしていたが、彼女が病気がちのため勤めはおろそかになり、同業の友人青木の心配にも拘らず操車監督香川に睨まれていた。お京と幼年からの喧嘩仲間お春と娘町子の一膳飯屋“よし野”。清太郎と町子は幼馴染の上、互に惹かれているが二人共生来の意地っ張り、加えて同居の証券会社勤めで香川の親戚高岡が町子に色目を使っていた。この頃、藤田の父君平太上京の知らせ。お京は同情していくらか貸してやるが、君平太は息子と葉子の別れ話で来たとあれば持前の侠気で葉子を励ます。あれやこれやで腐った藤田は深酒の翌日、二日酔で運転中、女の子を轢いてしまい早速、警察へ出頭。状況説明の証人は丁度同乗していた清太郎であるが、彼は正義感から、香川の入智恵をよそに藤田の過失と言いきる。しかし帰社してみれば青木や同僚の冷たい視線。一度はバカ正直と息子をなじったお京も、正しいことはどこ迄も、と香川らの前で啖呵まできるが、折悪く先日銭湯で猫ババした南京虫の件で連行。町子も近く転勤する高岡と福島へ行ってしまうと聞き、ヤケになった清太郎は父親ゆずりで秘蔵のヒョータンを片っ端から割る始末…。
毎日映画コンクール撮影賞(長岡博之):毎日映画コンクール男優助演賞(三井弘次)