1957(昭和32年)/2/27公開
配給:松竹(受託配給) 製作:秀映社スミダプロ
ある小学校におきた鉛筆紛失騒ぎを中心に、純真な子供心の美しさを愛情の眼で、優しく静かに描く。シナリオは中川順夫で、監督も同氏が久し振りにあたる。配役には高田稔が賛助出演するほか、松尾佳子とともに劇団こまどりの少年少女たちが出演、その他新人木崎伸子、東京映画の恵みち子など。
東京下町の小学校。杉下先生担当の五年二組で、ある日、吉田君の色鉛筆がケースごと紛失した。生徒たちの疑いは峰岸芳子にかかる。芳子のアダ名は“鉛筆こじき”、短くなった鉛筆を見れば拾っているからだ。杉下先生は芳子にその理由を聞くが、彼女は恥ずかしそうに黙っているだけ。先生も自分を疑っている、と悲しそうである。日曜日に先生は芳子の家を訪問、妹の正子から短い鉛筆で作った沢山のヒナ人形を見て芳子が鉛筆を集める理由を知った。芳子は恥ずかしそうに説明する。ヒナ祭りの日、上野動物園でおこもさんの子供が短い鉛筆でおヒナ様を作って遊んでいるのを見て以来、鉛筆集めで人形を作り気の毒な子にあげようと思いついたのである。話を聞いた杉下先生は芳子を疑っていたことを告白し、謝った。その翌日、吉田君が頭をかきながら、鉛筆が出てきたと報告する。吉田君の弟で一年生の二郎君が、兄の教室へ色鉛筆を借りにいったら体育の時間でいないので鞄から黙って持ち出したまま、昨日まで話さなかったのだ。「犯人は吉田君の弟の二郎ちゃんでした」と笑いながら報告した先生は、芳子さんのヒナ人形作りをたたえ、クラス全体でおヒナ様の日までに沢山人形を造って、不幸な子供たちに上げましょうと提案した。