1957(昭和32年)/11/12公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
鈴木兵吾の脚本により酒井辰雄が監督、倉持友一が撮影した時代劇。主演は高田浩吉に瑳峨三智子、名和宏、雪代敬子。ほかに紙京子、河津清三郎、柳永二郎、桂小金治など。色彩はイーストマン松竹カラー。
師走の一夜、江戸の火の番小屋の老人がしみじみ語る身の上話。ベッ甲問屋の倅与三郎は弟の喧嘩の仲裁に入ったため、かえって難がかかり、木更津の叔父の許へ一時身を預けた。旅立ち前、許婚のお鶴に会えるよう弟の与五郎がはからったが、与三郎は伊豆屋の跡目を弟に譲る決心で、彼とお鶴が結ばれることを願った。木更津で手伝に精出していた彼は、ふとお富を知りそめた。以前深川で左褄をとっていた彼女は、今は土地の親分赤間の妾にされている。そのため、与三郎は赤間から滅多斬にされ海へ投げこまれた。そしてお富も後を追った。それから二年。江戸では彼の死を悲しむお鶴をいたわってきた与五郎の胸に、いつしか慕情が芽生えていたが、与三郎は生きていた。しかも、江戸で“切られ与三”と異名をとり、蝙蝠安を連れて押借り、ゆすりを働いていた。ある日とある妾宅に押入った彼は、はからずも死んだと思ったお富にめぐり会った。二人暮らしの幸せな日々も束の間、与三郎は土蔵破りをして捕えられた。また一年。佐渡で苦役についている彼のところへ、蝙蝠安が送られてきた。お富の真心や赤間が伊豆屋に因縁をつけていることを聞き与三郎は嵐の夜、安と共に島を逃れた。伊豆屋に現れた彼は、驚喜する与五郎とお鶴に心にもない因縁をつけ、二人の幸せを祈って飛びだした。