1958(昭和33年)/10/7公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
長谷川伸の同名小説を、水野伸郎、野上龍雄が脚色、久方振りに丸根賛太郎が監督した、お家騒動をめぐる時代劇。撮影は片岡清。松本錦四郎、小山明子、北上弥太朗などが出演している。
江戸時代。出羽高畠五万石織田家の家老・藍坂群太夫は巨額の藩金を横領し、それが露顕すると、主君信邦を毒殺し、藩政を一手に握ろうとした。群太夫の息・帯刀は故信邦の愛娘・おちい様と許婚だったが、父と結びおちい様を老中田沼の側室に差し出すことで、父の仕事を助けようとした。自分は田沼の姪を嫁にして織田家を継ぐつもりである。江戸家老新藤五左衛門は、その田沼の意向を知らされ、苦しんだ。彼の甥・戸並長八郎は姫と幼馴染みだが、先年脱藩した。彼女が帯刀と婚約したのが苦しかったのか。長八郎は江戸で最も気の荒い牛方たちと喧嘩し、その元締谷ツ山と知り合った。姫から貰った印篭をすりとったお滝という女スリを、牛方たちがかばったのが因である。そのとき、長八郎は叔父五左衛門に会い、藩の窮状を始めて知った。彼は出羽へ行き帯刀を問いつめた。帯刀の心はすでにおちい様の上にはなく、出世慾にとりつかれていた。お滝は素朴な長八郎にひかれた。彼女は舟宿「船清」の女将でもあり、谷ツ山とともにひそかに群太夫らの陰謀を探った。田沼は故信邦の一周忌の法要を開き、姫をおびき寄せた。帯刀はひそかに江戸に来ていた。法要の帰途を襲って、姫を五左衛門の手から奪おうとしたのは彼の仕業である。駕篭の中身は長八郎の計略で代わったお滝だった。五左衛門の邸の警固の侍が、次々と何者かに斬られた。