1961(昭和36年)/5/9公開
配給:松竹 製作:松竹株式会社
椎名竜治の連続テレビ・ドラマの映画化で本山大生が脚色し、大曾根辰夫が監督した。撮影は石本秀雄が担当している。
佐多玲一は淡路島の南端の港町で廻漕店を営んでいたが、妹の消息を知りたい一心から、大阪のカスバと呼ばれる界隈に姿を見せた。ドヤ街にもぐりこんだ玲一は、多くの変わった人たちと接した。婦人刑務所で21年も服役したという猛者のおりん、ドヤのキリストといわれる薬局の主人徳兵衛、大学と呼ばれる拾い屋、エレベーター・ガールのルミ子、100円宿の娘ではげしい気性の芳枝、その親友の露子など。玲一は、やっと妹の幸代を不幸のどん底にたたきこんだ張本人池内とめぐりあった。今は土地の顔役神崎組の組長代理として竜次と変名した池内こそ幸代の夫で、一年ほど前、玲一が父の反対を押しきり自分の責任において一緒にしてやり、金まで添えて駈けおちさせてやったのだった。竜治は「神崎親分が幸代を奪いとって売りとばしたのや」と告げてすばやく逃げ去った。女をくい物にしている竜次は、高とびの金目当てに立ちん坊の六を刺した。六は玲一に救われ一命はとりとめた。まもなく刑期を終えて出獄した神崎親分と対決した玲一は、竜次の口車にのせられていたことを知った。竜次はすでにドヤ街から姿を消していた。ルミ子、芳枝そして露子の三人の女が玲一を慕っていた。芳枝には一方的に決められた許婚者があった。この一帯に勢力を誇る資源回収問屋「吉野商店」の息子でうすのろの東吉である。映画館の切符切りの露子にはポン引きの勝三がつきまとっていた。神埼親分は吉野を動かし、タクシー会社を始めたが、吉野は吉野でビルの建設に着手した。玲一は妹をさがすために吉野の用心棒となった…。