1966(昭和41年)/8/27公開
配給:松竹(受託配給) 製作:現代映画
川端康成の小説「みづうみ」を石堂淑郎、吉田喜重とテレビ・ライターの大野靖子が共同で脚色し、吉田喜重が監督した文芸もの。撮影は鈴木達夫が担当している。
水木宮子は結婚8年、表面上は幸福に見えたが、仕事以外に関心を示そうとしない夫の有造にあきたらなくなっていた。彼女はいつしか若い室内装飾家北野と情事を重ねるようになった。そしてある夜、彼女は自分の裸体を北野に撮らせたが、そのフィルムをホテルの帰り、暴漢に奪われてしまった。それ以後彼女は見知らぬ男の脅迫を受け、そしてついにそのネガ・フィルム欲しさに男の指示通りの列車に乗るのだった。ある駅で脱線事故で止った列車を降り、焦燥と不安にかられる彼女の前に北野が現われた。「金で解決するより仕方がない」とすげない返事をした北野だったが、心配して追ってきたのだった。町の旅館のふたりにまたも例の男から電話がかかった。翌日北野は一軒の写真屋で脅迫の主と思われる桜井銀平を見つけた。写真屋へかけあいに行った宮子は好色そうな主人にすげなく断られネガを手にすることが出来なかった。桜井銀平は以前、女学校の教師をしていたが、教え子と恋愛事件を起こし、放校され世の中の落伍者として生きている男だった。夜、桜井を訪ねた北野は煮えきらない桜井に激昂し殴打した。ところが桜井は北野の許婚者の女子大生町枝を温泉町に呼びつけて宮子と会わせた。北野から「奥さんのことは遊びだった」と言われた宮子は、「私だって浮気よ」と言い放たざるを得なかった。そして家庭を守るためにもネガ・フィルムを取り戻さねばならず、再度桜井を訪ねたが失敗し、K市に行くという桜井に従った。車中かつての恋愛事件を語る桜井は脅迫者というよりむしろ愛の殉教者のようで、宮子には夫や北野より純愛に似た愛情を感じるのだった。そして故郷へ帰る銀平に何の抵抗もなくついて行き、桜井に身をまかせた。反面、宮子は桜井が死ねばこれまでの苦しみが消えると思うのだった。