1974(昭和49年)/11/2公開
配給:松竹 製作:松竹 / 文学座
学生生活に倦怠感を覚えている青年と、田舎から上京して働く清純な娘とのめぐりあいから、悲しい別れまでを描いたラブ・ストーリー。脚本は石森史郎、監督は市村泰一、撮影を小杉正雄がそれぞれ担当している。
山脇久、21歳の大学生。学生生活に意味を見い出せず、ここ一年くらい学校へは行っていない。現在、アルバイトをしながら漫画家をめざしている。青木伊都子。幼い頃、母に死なれ、父・勇吉がストリッパーとかけ落ちしたために、叔父夫婦にひきとられた。そして、中学を卒業した後、上京し、現在はハンバーガー店に勤めている。そんな久と伊都子の出会いは、いつも突然で何気なかった。ある時は友人の結婚式だったり、伊都子の勤めるハンバーガー店だったり、また映画館だったり……。こんな二人が一緒にいたいと思うようになったのも、ごく自然のなりゆきだった。久には比較的親しい女友達が二人いる。一人は雪絵。大学の同級生で、時々、食事したり、音楽会へ行ったりする、そんな間柄である。もう一人は知子。半年前まで久と同棲していたのだが、今ではある男と結婚している。しかし今だに久のことが忘れられず、アパートを不意に尋ねたりする。だが、久の心は伊都子のことでいっぱいであった。ある日、勇吉がひょっこり尋ねて来て、叔父夫婦への義理立てから、田舎の神主の息子との結婚をすすめた。伊都子からこの話を聞いた久は、彼女との結婚を決意した。だが、久の愛と、叔父への義理に、伊都子の胸ははり裂けそうだった。「私……郷里へ帰る。明日、上野駅で待ってます。おねがい、もう一つだけ想い出をつくって……」伊都子にはこれだけを言うのが精一杯だった。