1975(昭和50年)/3/15公開 93分
配給:松竹 製作:松竹 / NPプロ
愛人と外国へ旅立つのを目前に控えた姉と、その姉を母のように愛する弟との別れをリリカルに描いた物語。脚本は仲倉重郎、監督は脚本も執筆している斎藤耕一、撮影を坂本典隆がそれぞれ担当している。
賢は姉の葉子が、ブラジルのサンパウロ市に移住する理由が分からなかった。しかも、葉子を誘った小沼という男は、五十歳をすぎ、会社が倒産してエリートの道を踏みはずしているのだ。両親を早く亡くした賢にとって、岐阜の柳ケ瀬でホステスをして自分の面倒をみてくれた葉子は母のような、恋人のような存在なのである。葉子が小沼を愛しているのは間違いなさそうだが、今度の外国行きには、素直に喜べない。その不安感が賢を葉子の出発地である横浜まで見送りに来させた動機だった。小沼は横浜の待ち合せ場所に来ていなかった。出航も二日程遅れるということだった。連絡もよこさない小沼に腹を立てる葉子だが、賢が小沼をなじるとヒステリックに反発した。夜の街に飛び出した賢は、とあるディスコテイックに入った。そして、そこで知り合った女子大生の宣子にラブ・ホテルへと誘われた。彼女は不毛の学生生活への復讐の為に男--賢を誘惑したのだ、と告白した。そんな宣子のぜい沢な悩みを聞くと、賢は、常にギリギリのところで生きてきた姉が哀れに思えて来て、姉のいる宿に戻った。だが、戻った賢が見たのは、姉と小沼の情事の姿だった。たまりかねて外へ飛び出した賢を葉子が追いかけて来た。弟は逃げ、姉は追いかける。二人の胸に幼い日々が甦って来た。葉子は賢を抱きしめた。葉子の懇願で、賢は小沼と対面した。小沼は、葉子との新しい生活で人間として立ち直りたい、と真情を吐露するが、賢は愛する姉を奪っていく男を信ずることができず、再び街へ飛び出した。