1980(昭和55年)/12/27公開 100分 カラー
配給:松竹 製作:松竹株式会社
『男はつらいよ』シリーズ第26作。死んだテキ屋仲間の娘を柴又に連れてきて夜間高校へ通わす寅ととらやの人々の暖かい人情を描いたストーリー。マドンナには元キャンディーズのランちゃんこと伊藤蘭が迎えられている。脚本は山田洋次と同作の朝間義隆による共同執筆、監督を山田洋次、撮影を高羽哲夫がそれぞれ担当している。
北海道は江差の町、寒風が吹きつける中で、寅は顔なじみのテキ屋仲間と威勢のいいバイをしている。その時、寅は仲間から常連の常が病死したことを知らされる。遊び人の末路にたとえようのない索漠さを感じた寅は、墓まいりに常の故郷、奥尻島へ渡った。そこで、イカ工場で働く常の一人娘すみれと会った。寂しそうなその娘は、東京へ出て働きながら勉強したいと言う。心配性でめんどう見のいい寅は放っておけない。数日後、若い娘を連れて現われた寅にとらやの一同はビックリ。そして、寅の熱心な説得で、さくらをはじめ、皆がすみれを手助けすることになった。社長の口ききで近所のスーパーに勤め口が決まった。そして、夜間高校の試験も見事に突破する。一方、寅も試験のときから、すみれと一緒に学校へ通い、忙しそうだ。充実した暮らしに、すみれはだんだん明るくなっていく。ところがある日、すみれは夜になっても帰ってこなかった。寅はイライラ、とらやの連中はあっちこっちに電話をした。朝になってすみれは帰って来た。すみれには貞男という恋人がいたがある事情で行き違いになっていた。その貞男がすみれを迎えに北海道からやって来たのだ。二人は一緒に暮すと言う。すみれの告白に寅はムッとし、旅仕度をする寅。そんな寅にすみれを信じようとさくらは言う。店を出て行こうとする寅の前にすみれが現れ、寅にしがみつくと大粒の涙をこぼした。「幸せにならなかったら承知しねえぞ」と寅はやさしくすみれに言うと、とらやを後にするのだった。