1985(昭和60年)/10/5公開 108分 カラー
配給:松竹富士 製作:松竹富士 / 廣済堂映像 / ケイ・エンタープライズ
余命いくばくもない昔の恋人のもとに走った男と取り残された妻と子の葛藤、その妻と恋人の友情を描く恋愛映画。原作は第91回直木賞を受賞した連城三紀彦の同名小説。脚本は「いつか誰かが殺される」の高田純と「美加マドカ 指を濡らす女」の神代辰巳、監督も同作の神代辰巳、撮影は「テラ戦士Ψ BOY」の山崎善弘が担当している。
竹原郷子は、女性雑誌の編集部につとめるキャリアウーマンであり、33歳である。夫の将一は郷子の一つ年下で中学の美術教師をしており、二人の間には優という一人息子がいる。その将一がある朝突然、女性からの手紙を残して家出した。手紙の差出人は田島江津子と書いてあり、将一のかつての恋人であり、今は白血病に犯されあと半年の命だと手紙には書かれていた。将一は、身よりのない彼女が死の時を迎えるまで自分の全てをかけて看病しようと、学校もやめた。郷子は将一の態度に憮然とした。彼女の境遇に同情はするが、なぜ郷子の夫である将一が学校をやめて家出までするのか、また、郷子と優はどうなるのかと思った。数日後、郷子は将一に乞われ、従姉という立場で江津子のお見舞いに行った。二人はなごやかに談笑し、将一という男を間に奇妙な友情が芽生え始めた。その夜、郷子は息子に「長く生きられるお母さんは、死んでいく江津子さんのためにお父さんを半年貸してあげるの」と説明した。そうは割り切ったものの、郷子が夫がもう戻ってこないかも知れないのではないかという不安におびえる毎日が始まった。その夜、郷子は胸の痛みに耐え切れず昔の恋人・神谷哲史を訪れ、身体を開いた。忍耐が限界に達した郷子に追い討ちをかけるように、将一は元気なうちに結婚式だけでも挙げさせたいので離婚届けにハンを押してくれと言い出した……。
毎日映画コンクール録音賞(橋本文雄)・女優主演賞(倍賞美津子):キネマ旬報賞主演女優賞(倍賞美津子)・助演男優賞(小林薫):日本アカデミー賞録音賞(橋本文雄)・主演女優賞(倍賞美津子)・助演男優賞(小林薫)