2009(平成21年)/5/16公開 133分 カラー ビスタサイズ
配給:松竹株式会社 製作:製作:2009「60歳のラブレター」フィルムパートナーズ
長年連れ添った夫婦が、口に出しては言えない互いへの感謝の言葉を1枚のはがきに綴る応募企画「60歳のラブレター」。2000年から毎年募集され、日本中から約8万通を超えるはがきが寄せられ大きな反響と共感を得ている人気企画に着想を得て、本作は製作されました。中村雅俊、原田美枝子、井上順、戸田恵子、イッセー尾形、綾戸智恵といった豪華キャストが、個性的な3組の夫婦を熱演。歳を重ねてこそ感じる迷いや焦り、喜びや幸せ、そしてかけがえのない大切な人との絆を丹念に演じます。パートナーとどう人生を歩んでいくか、何より<わたし>はどう生きるのか。これからの人生をよりよく、美しく輝いて生きていこうとするすべての人たちに、勇気と希望を与えてくれる感動作です。
橘孝平(中村雅俊)とちひろ(原田美枝子)は、孝平の定年退職を期に、離婚を決めた。高度成長期、仕事に打ち込み、野心家のエリートとして大手建設会社の重役にまで上り詰めた孝平。これからは、恋人の夏美(原沙知絵)が経営する建設事務所で、若いスタッフと共に今まで培った経験を存分に生かすつもりだ。ちひろは、父親に言われた相手と結婚し30年、愚痴をこぼすこともなく家族に尽くしてきた専業主婦。孝平の退職日、お頭つきの鯛の刺身と手料理を食卓に並べ、帰りを待っていた。まもなく、身ごもった娘のマキ(星野真里)が同棲中の八木沼(内田朝陽)を連れ、父親の退職祝いにかけつけた。しかし、孝平は今日も家に帰ってこない。孝平は、転職の挨拶も兼ね、なじみの施工業者に受注の依頼をするが、あっさりと断られてしまう。「うちが付き合ってきたのは、あなたじゃなくて京亜建設だ」。自分の力で築きあげてきたと思っていた人脈、キャリア。それがすべて会社の名の下にあったというのか?自らの愚かさに落胆する孝平。疲れ果て戻ってきた事務所では、孝平が否定した若手スタッフの企画がコンペで採用され祝いの席が設けられていた。居場所のない孝平。今までの人生で経験したことのない屈辱を味わっていた。そんな時、娘・マキの子供が生まれ、久しぶりに前妻・ちひろと再会する。そこには、孝平が今まで見たことのないよく喋り、よく笑い、美しく輝くちひろがいた。病院からの帰り道、空腹の孝平を見かねたちひろは、孝平のために夕食を作る。ちひろの焼いた魚の干物を「旨いなぁ」としみじみと食べる孝平。どことなく気落ちしているようにみえる孝平にちひろは励ましの言葉をかけるのだった。孝平に上着を着せ、鞄を持ち、玄関先から見送る自分。ちひろは30年間繰り返してきたこの習慣にどこか懐かしさを感じていた。