2009(平成21年)/10/31公開 133分 カラー
配給:松竹株式会社 製作:「風が強く吹いている」製作委員会
彼らの挑戦は、誰が見ても無謀だった。本人たちですら、不可能だと思っていた。ただ1人、この夢を企てた男、ハイジ以外は──。天に与えられた走る才能をもった2人の若者が出会った。致命的な故障でエリート・ランナーへの道を諦めたハイジと、事件を起こし競技から遠ざかった天才走者カケルだ。ハイジはカケルこそが、秘かに温めていた計画の切り札だと確信、壮大な夢への第一歩を踏み出す。それは、寛政大学陸上競技部の8人と、学生長距離界最大の華<箱根駅伝>出場を目指すこと。ところがこの競技部とは名ばかりで、8人は陸上から縁遠い上に、漫画オタクや25歳の留年生、アフリカから来た留学生など、ユニークなキャラクターがそろっていた。だが、なぜかハイジは、自信に充ち溢れている。彼の編み出す緻密なトレーニング法と走ることへの信念、仲間への揺るぎない信頼が、皆を変えていく。やがて明かされる、ハイジの故障の理由とカケルが起こした事件の真相、そして8人それぞれが抱えてきた本当の想い。果たして、心を一つにした10人は、箱根の頂点に立つことができるのか──?
ついに、ハイジ(小出恵介)は見つけた。共に夢を叶える仲間の、切り札にして、最後の1人を。彼の名はカケル(林遣都)、18歳。ハイジが4年生になる寛政大学に、この春から通う新入生だ。高校時代に天才ランナーと呼ばれた彼の走りをその目で確認したハイジは、戸惑うカケルを半ば強引に、自らが寮長を務める竹青荘に入居させる。まかない付きで3万円という破格の家賃には、陸上競技部に入部して毎朝5キロ走るという入居条件があった。ハイジの作るうまい料理のために、喜んで走り続ける8人の住人は、まだ誰もハイジの野望に気付いていなかった。ハイジの突然の箱根駅伝出場宣言に、唖然とする9人。それもそのはず、ハイジとカケル以外は全員、陸上とはかけ離れた者ばかりだ。「素人が、無理です!」強く反対したのは、なぜかカケルだけ。だが、ハイジには勝算があった。翌朝から箱根を目指す日々が始まった。寛政大学は予選会に向けて、夏の合宿訓練を開始する。近くでは、ライバルの東京体育大学も合宿、カケルの高校の同級生・榊(五十嵐隼士)の姿もあった。「そいつ監督を殴って、俺たちの最後の1年を棒に振ったんですよ」挑発的な榊の言葉に「知ってるよ」と平然と答えるハイジ。夏が終わり、秋になり、予選会の日がやってきた。寛政大学は最下位の9位ながら見事に通過、ついに箱根への切符を手に入れる。年が明けて1月2日、箱根駅伝のスタート地点、東京大手町。1区を走る王子は、プレッシャーに勝てるのか? 風邪を引いた神童は? そして何よりも、ハイジの膝は──? 「最高の朝だよな、カケル」1本の襷にすべてを賭けて、ついにレースが始まった──。