2013(平成25年)/6/1公開 96分 カラー ビスタビジョン
配給:松竹 製作:「はじまりのみち」製作委員会
『二十四の瞳』、『喜びも悲しみも幾歳月』、『楢山節考』など数々のヒット作を生み出し、盟友・黒澤明監督と共に、国民の人気と評価を二分した監督・木下惠介。木下惠介生誕100年を機に、カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンの世界三大映画祭で相次いで木下作品が上映され、今、再び世界中が注目しています。差別や暴力、戦争を憎み、人間の醜さや美しさ、強さと弱さをありのまま肯定し、深い愛情をもって見つめ続けた木下の原点とは一体何だったのか―。映画『はじまりのみち』は、木下の運命を変えた感動の実話を元に、母を想う息子と、愛する息子を信じ続けた母の真実を描きます。監督は、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『河童のクゥと夏休み』など多くのアニメーションを手掛け、国内外で高い評価を得ている原恵一。木下を敬愛し、熱烈なファンであることでも知られる原の、初めての実写映画監督作品となります。
戦後の映画史を動かした青年監督の人生を変えた<運命の数日間>とは…?時は戦中。映画界に政府から戦意高揚の国策映画づくりが要求された時代。木下惠介が昭和19年に監督した『陸軍』は、その役割を果たしていないとして当局から睨まれ、次の映画の製作を中止にさせられてしまう。すっかり嫌気がさした木下は松竹に辞表を提出、脳溢血で倒れた母、たまが療養している浜松市の気賀に向かう。失意の中、たまに「これからは木下惠介から本名の木下正吉に戻る」と告げる惠介。戦局はいよいよ悪化の一途をたどり、気賀も安心の場所ではなくなる。惠介は、山間の気田に疎開することを決め、その夏、一台のリヤカーに寝たままの母を、もう一台には身の回り品を乗せ、兄と、頼んだ「便利屋さん」と自分の三人で、夜中の十二時に気賀を出発し山越えをする。十七時間歩き通し、激しい雨の中リヤカーを引く三人。ようやく見つけた宿で、母の顔の泥をぬぐう惠介。疎開先に落ち着いて数日後、惠介はたまから一通の手紙を渡される。たどたどしい文字で書かれたその手紙の言葉とは…。