1992(平成4年)/2/15公開 99分 カラー ビスタ 映倫番号:113658
配給:東映 製作:電通 / エフエム東京 / ソニー・ミュージックエンタテインメント / 東北新社 / 北海道放送 / キネマ東京
ラジオ朗読をきっかけに一大ブームを巻き起こし、大ベストセラーを記録した栗良平の創作童話の映画化作品。
交通事故を起こして死んでしまった父親の遺志をついで健気に生きる母子と、一人息子をやはり交通事故で亡くしたそば屋夫婦との温かい交流を描いた感動の物語。
ある大晦日の夜、店じまいをしかけたところに「かけそば、一人前なのですが、よろしいでしょうか」。
ほんとに申し訳なさそうな母親とその影に隠れるようにしていた幼い兄弟に、「かけ一丁!」と明るく元気な声でお内儀さんは応えてくれました。無口なご主人はそっと玉そば一個半をゆでて出してくれます。
「北海亭」は、味も人情も札幌一だという評判のおそば握さん。そのさりげない温ったかさに魅かれて、タウン誌編集長の秋山女史や北海新聞の熊井記者、市役所観光課の服部氏、洋服屋の娘昌代さんたちが毎晩のように顔をだします。ご隠居と八百屋の常次郎さんは、毎年大晦日には老人ホーム・長寿園に年越しそばのボランティアに張り切っています。
次の年の大晦日にも母子三人はやってきてかけそば一杯を注文しました。下の男の子が、交通事故で亡くした一人息子に年恰好が似ていることもあって、そば屋夫婦はこの母子三人をそれはそれは心待ちにしていました。
値上げをした年も、値札を掛け替えて三人を待っています。二杯注文できるようになっていて、三人の話の内容から、父親が交通事故を起こして死んでしまったことがわかりました。
賠償金を返すために母親は夜遅くまで働き兄弟がそれを助けていたのでした。
そんな貧しさの中、弟は「たった一杯のかけそばでも『ありがとうございました!』と心から声をかけてくれた、あのおそば屋さんのような人になりたい」と作文に書きました。
でも翌年から母子の姿が見えません。それでも、そば屋夫婦は改装後も三人が座っていた“一番テーブル”だけはそのままにして、待ち続けていました。
月日が巡って…
また大晦日の夜、北海亭に見違えるように立派になった二人の青年と母親が訪ねてきました。あの後、父親の郷里の愛知県へ移り住んでからも、一杯のかけそばに励まされて、三人、手を取り合って頑張り、兄弟は今はそれぞれ教師と海外青年協力隊員として活躍しています。
「人生で最高の贅沢を計画しました。それは、北海亭で四人前のかけそばを注文することでした」
「そうだ、ダンナ様にも食べて貰わなくちゃね」
「かけ四丁!」
北晦亭はみんなの笑顔と幸せな涙に包まれました。
第16回日本アカデミー賞(最優秀編集賞)