2001(平成13年)/5/26公開 114分 カラー ビスタ 映倫番号:116015
配給:東映 製作:「ホタル」製作委員会
20世紀なかばを覆った戦争の時代を生き抜き、戦後の変転を経て、さらに21世紀への道のり。二つの命をひとつに重ね、愛の灯火をかざして行く一組の<夫婦>がいる・・・。キャストは朴訥な漁師・高倉健を囲んで、妻・智子に田中裕子、旧友・藤枝に井川比佐志、その孫娘に水橋貴己、知覧の母・富子に奈良岡朋子。スタッフは監督・降旗康男、撮影・木村大作をはじめとして、「鉄道員」製作メンバーが再結集。物語のクライマックスは韓国の魂が息づく伝統の村・河回(ハフェ)の地に高倉、田中が立ってロケーションを敢行。
激動の「昭和」が終わり「平成」の世が始まったある日、藤枝という男が青森の冬山で亡くなったという知らせに山岡は愕然とする。山岡と藤枝はともに特攻隊の生き残りだった。昭和という時代の後を追い厳寒の雪山を独り歩む藤枝の姿が浮かび、山岡は唇をかみしめる。わずか一月前、故郷の青森から孫娘の真美を連れてはるばる鹿児島の知覧へ来たが、山岡とは会わぬままだった藤枝。毎年冬になると美味しい林檎を送ってくれたあの男がなぜ…友の想いを痛いほど知っている山岡だったが、それでもそう問いかけずにはいられなかった。山岡が22歳の初夏。この鹿児島湾から幾つもの若く尊い命が、重い爆弾を抱えて飛び立った。永遠に帰れない片道飛行。しかし山岡や藤枝のように、役目を果たせず様々な想いを抱えたまま帰ってくる命もあった。そんな命の数々を見つめ続けた人物がいた。山本富子…若者達から愛をこめて“知覧の母”と呼ばれた女性である。そして40数年後、山岡は富子からある頼みを受ける。体の自由が利かなくなった自分に代わって韓国へ行ってほしい―南の海に散っていった戦友・金山少尉の故郷が韓国だった。本名はキム・ソンジャ。知子の初恋の相手で、結婚を約束した男である…富子は山岡に、金山の遺品である故郷のお面飾りのついた財布を手渡す。そして山岡は、金山からもう一つ大切なものを預かっていた。愛する知子への最期の言葉…特攻が特攻に託した伝わるはずのなかったあの日の言葉は、今もまだ山岡の胸の奥にあるのだった…容態が次第に悪化していた知子が、身の回りをすべて整理してあるのを知り立ち尽くす山岡。その山岡に宛てて藤枝が書いていたノートを、遥々届けに来た孫娘の真美。飛び立つ直前に見せた金山の笑顔…幾つもの人々の想いが、山岡の背を押していた。いつしか山岡の心には男として、夫として、20世紀を生き抜いた人として、ひとつの決意が芽生えていた。
第25回日本アカデミー賞(優秀作品賞・優秀監督賞・優秀脚本賞・優秀主演女優賞・優秀助演男優賞・優秀助演女優賞・優秀音楽賞・優秀撮影賞・優秀照明賞・優秀美術賞・優秀録音賞・優秀編集賞)