2002(平成14年)/2/9公開 114分 カラー ビスタ 映倫番号:116132
配給:東映 製作:「化粧師」製作委員会
石ノ森章太郎の原作コミックを実写映画化。女性解放の予感に満ちた大正時代を背景に、新たな人生の一歩を踏み出そうとする女性たちと、化粧を施して彼女たちの背中を後押しする化粧師〈けわいし〉との交流を描いた人間ドラマ。因みに化粧〈けわい〉とは、頭のてっぺんから爪先まで女性を美しくすることを意味する古語で、人体の内外面の隅々にまで気(KE)を配(WAI)することを語源とする。
大正初期の東京の下町に、女たちに化粧を施すことを生業とする男がいた。職人気質で少しばかり偏屈ではあるが小三馬というその男の腕は確かで、一部の上流階級の女性や芸者たちの間では評判になっていた。ある日、呉服店の女将・三津森鶴子の化粧をしに行った小三馬は、そこで文盲の下働き・時子と出会う。彼女の夢は字を覚えて、深川の大火で焼け出されバラック生活を送る子供たちに本を読んで聞かせることであった。それを知った小三馬は時子に字の練習本を贈ってやる。その甲斐あって、字を覚えた時子の夢が叶ったのも束の間、バラックに立ち退き命令が下り、役人による強制執行が実施されることになった。仲間を助ける為、執行書を奪い小三馬の元に逃げ込む時子。そんな彼女に小三馬は化粧を施し変装させ、追手の目を欺くのであった。しかし、小三馬に密かな思いを寄せながら、別の男に嫁ぐことになった天麩羅屋の娘・純江の婚礼の日、彼女に化粧をしてやった小三馬に官憲の手が迫る。純江と彼女の父の機転で小三馬は逮捕を免れたが、図らずもその騒動で、小三馬が聾者であることが明らかになる。幼い頃、鉱毒によって小三馬は聴覚を失っていたのであった。彼が偏屈に見えたのもそれが原因であった。それから数日後、時子が女優選抜試験を受けることになった。申し込みの写真を撮るという彼女に、小三馬は一世一代の化粧をしてやる。
第14回東京国際映画祭最優秀脚本賞受賞