2004(平成16年)/11/13公開 129分 カラー ビスタ 映倫番号:117001
配給:東映 製作:「海猫」製作委員会
森田芳光監督と脚本家・筒井ともみの「失楽園」コンビが、谷村志穂の同名小説を原作に得て、再び「禁断の愛」の物語に挑む。混血で美貌のヒロインが、北海道の漁村に嫁ぎ、夫とその弟との間で揺れ動く姿を描く。主演・伊東美咲の他、脇を固める佐藤浩一、仲村トオル、三田佳子、白石加代子らの実力派俳優のアンサンブルにも見応えあり。それぞれの激情を秘めた登場人物の愛憎劇が、冷気が張り詰めた北国の海辺の風景に展開する。情感溢れる悲恋ドラマである。
女子大生・野田美輝はフィアンセから一方的に婚約を破棄された。亡くなった美輝の母・薫の事が原因らしい。故郷函館に戻った美輝は意を決し、祖母タミに真実を訊ねた。・・・若い頃、タミはロシア人の夫に死に別れ、それ以来、娘の薫を一人で育ててきた。生い立ちと人目を引かずにはおかない美貌のため、好奇の目に晒される函館の生活に違和感や息苦しさを感じていた薫は、勤め先で出会った漁師・赤木邦一の無骨で真っ直ぐな人柄と逞しさに惹かれ結婚し漁村に嫁ぐ。赤木家の家業”昆布漁”に勤しみ、やがて美輝という娘も生まれ傍目には順風の暮らしであったが、邦一は薫の心の奥に、自分には触れることが出来ない”何か”を感じ取り、浮気で憂さを晴らすようになる。孤独を募らせる薫もまた自分に思いを寄せる邦一の弟・広次に惹かれるようになる。函館で働く傍ら、ハリストス正教会に通い絵筆をとる広次は、出会いの日からずっと薫に似せたマリアのイコンを描き続けていたのだった。教会の仄かな光の中で、薫と広次の想いが深く交錯する・・・。一年後、2人目の娘・美哉が誕生したのを切っ掛けに、運命の歯車がうねりをもって回り始める。兄弟の熱情のはざ間で苦しむ薫。後戻りのできない3人の物語は、海猫の舞う太平洋を臨む崖の上で、悲劇的結末に向かうのであった。
第28回日本アカデミー賞(新人俳優賞)